君たちはどう生きるか(映画)

まず、思ってたのと違った。

前回が「風立ちぬ」でしょう。さらに同タイトルの「君たちがどう生きるか」という書籍や漫画が店頭に出ていて、それ読んでるでしょう。てっきりあの本が原作なのだと思うじゃん。全然違った。

もう最初から違う、お母さんあっさり他界してるし主人公がいいとこの子なのだ。あれ?話違うよね。って面食らってる間に、異形の作画のばあちゃんズ登場。そこでやっとああこれは原作をなぞる映画ではない、いつもの異界行きか?って合点する。

こんな感じでどんな映画かよくわかんないまま監督の名だけを頼りに足を運んだが、オープニングから宮崎駿の指揮だなあといちいちに感動した。火事場へ疾走する主人公、その前の気ばかりはやる着替え、ナツコの妊婦様ハイによる居た堪れなさ。「違うそうじゃない」を連呼したくなるピントのズレた父。ただの背景とも思えた鳥がアニメーションへと華麗に展開されるさま。絶対に何かある図々しいばあちゃんズ。冒頭ですっかり吸い込まれた。

 

今作、母親と冒険するという少し間違えれば村上春樹の世界なのだがもうこれは男性が共通して持つ永遠のファンタジーなんだろうか。女性はさ、あんま若いときの父親と再会したいと思わないもん、たとえ死別していても。宮崎監督も何か心の内を投影してしまったのかな?ただここで勘違いしてはいけないのが、宮崎駿の母親像はヒミではなくキリコさんなんだ、絶対。ポニョのときもトキさんていう捻くれたばあちゃんがでてきたのだけど確かあれ母親がモデルだった気がする。トキさんとキリコばあちゃんはすごく似ている。

 

上映後にパンフレット買ったのだけどお金払うときに映画館の人が済まなそうなビミョーな顔していて、なんでかなと気になっていたのだけどめっちゃスカスカのパンフレットだった!詐欺!サギ!ここまでがオチなの?っていうくらいの詐欺!

そして声優の答え合わせ。ナツコが木村佳乃とあってもうドンピシャ過ぎてあんたしかいないよ!!って感動しきり。彼女はいいとこのお嬢さん役がほんとに似合うの。木村拓哉もバレバレだったがむしろ配置の仕方としては所ジョージポジションで、声も通ってなかった。もしかしたら普段通りにしゃべってくれと指示されてるかもしれないが。とまれ役者さんも観る側も年取ったなあって正直思った。もちろん監督も。パンフレットの企画書に、この映画制作の最大課題はいつまでぼく(宮崎監督)が生きているか?である、というようなことが自嘲的に書かれていて笑ってしまった。その弱みを自ら言えてしまうのが監督らしい。そして制作委員会が宮崎監督の寿命にbetしたわけである。巨匠の寿命にのっかる凄まじい映画である。

 

(追記)

そうだひとつだけ嫌だったのが積み木の説明のシーン。あんなyoutubeの算数解説動画みたいなコマ誰が許したんだ…。なんかそこだけ映像が場違いで気になってしまった。

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ポニョで大正時代の赤ちゃんが出てくる海の概念が気になっていたのだけど、今作で答えでた。生きてる人もいるけどほとんど死んでる、のだった。

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ナツコがお姉さまに申し訳ないと言って泣くでしょう。あれは姉の夫と恋仲になった懺悔もあるのだろうなあ。妊婦様かと思いきや浮かれポンチは父親だけであった。

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そしてエンドロールの歌。すごくうまいし声もいい。いったい誰だろう、大型新人か?と思ったら米津玄師だったw 超有名じゃん…ベテランじゃん…なぜ気づかない自分。米津玄師って有名だけどいまいちピンとこなくてKICK BACKは良かったがスローな曲はずっと良さがわからないままだった。しかし今回はじめて凄いと思った。もしかしたら彼の歌はタイアップする番組とか映画とかを知り得ていると琴線に触れる仕組みなのかな?曲単体で聞いてもその良さが完全には分かりづらいのかも。レモンが有名だけどアンナチュラルを見てないし、KICK BACKは良いと思ったがもともとチェンソーが好きだったから。