311の夜に

さまざまな幸運で午後9時には家に帰れたのだが、あの日は本当に異様だったと思う

家族や友達や仲間がいる幸せを感じたし、一方で友達はあくまで友達なのだとも思った

これはコロナ禍でもそうだったが極限状態ではやはり家族が必要だ。べつに家族という形でなくとも構わないが、命綱を預ける運命共同体を有していないと自分は消えてしまいそうだった。こんな人間は悪い宗教につかまらないようにしないと

光る君へ9 遠くの国

「遠くの国」

お勉強会で始まるの、定着してきた。倫子様のガチラブを察する取り巻き姫とまひろ。as倫子様の黒木華さん最高なんだ。お菓子もぐもぐ、口角をキュッとあげる様、物言う目線、品があり鈴の鳴るような口調が素晴らしく、手厳しい言葉も嫌味にならない。ゆっくりと手元と袖でお気持ちを表現する様は狂言や歌舞伎にヒントを得たのだろうか。「もったりとしていて好みではなかった」斉信がたいそう失礼な品評をしていたが、そう見えたならその男に興味が無いのである。袖にされて負け惜しみを言うのはみっともない。どう考えても倫子様はその時代の1軍女子だもの。そりゃあ、ききょうは愛想がある。だって人妻のききょうにとって男は自分がまだまだイケるって確認するための媒体だから。

直秀は盗賊だった。視聴者は知っていた。一味として捕縛され連行されたまひろの姿を目の当たりにし、直秀は声も出ない。だが駆けつけた道長によってまひろは釈放される。直秀は安堵するが心の内は複雑だ。まひろが助かったのは道長が上位貴族だったからだ。自分にその力がないことをまざまざと見せつけられる。

一方で心燻り悪意募らせるのは心付けを渡された検非違使だ。盗賊団への便宜のみならず下級貴族女まで釈放させられ、メンツ丸潰れである。あの程度の金では割に合わないと算段する。そうだ、これは不足分だと企みが始まる。道長の後ろ盾となる右大臣様が伏せっていたのも悪条件だった。落ち目貴族の言うことをつぶさに呑み込む必要などなかろう、と。

道長とまひろは人気のない屋敷まで逃げ延びる。おそらく神事や占いの際に住まいを移すための別宅だ。「信用できる者なぞ誰もおらん。親兄弟とて同じだ。まひろのことは信じておる。直秀も」自身の思いを打ち明ける道長東三条殿で今まさに進行しているはかりごとを想起させる。二人きりになっても距離を置こうとするまひろに、距離を詰めようとする道長。「もう三郎とは呼べないわ」それを決意固く押し返すまひろ。遠くの国のイメージ映像として挿入された海辺の波はまさに寄せては返す二人の関係性である。移り屋からの帰り道、あの盗賊たちは義賊だったと知り、尚のこと、直秀とまひろの友愛を取り持とうと考える道長だった。二人の間にほのかな慕情が垣間見えつつも。

ここで8話をプレイバック。兼家の祈祷シーンでは怨霊に腰を抜かす道兼と道隆を尻目にすぐさまイタコを引き剥がそうと飛びつく道長。ある夜には枕元で一族の行末を、生き延びて答えを教えてくれと懇願する道長。兼家は道兼を間者に抜擢したが頼れるのはこの道長だろうと心に定めたはずだ。順番はある。しかし一族を遠く高みまで連れて行けるのはこの男だと。

為時の家を前触れなく訪れた道兼だがおそらくこれも間者としてである。兼家の元を離れようとした為時に翻意がないか、7年前の醜態を世に晒すのではあるまいなと嫌疑をかけられたのである。いや嫌疑をかけられるべきは道兼その方なのだけれど。道兼の家庭訪問に為時もまひろも地雷を踏み抜かずなんとかお試験突破した。もし問答を間違えていたら母と同じく切られていたことだろう。

そうしていよいよ7話終盤から続く兼家の伏線回収ターンである。「今日はお手が温かいわ」「お心置きなく旅立たれませ」声をかけられるやガバリと起き上がる兼家。偽りの病。絶叫する実娘。恍惚とした表情の道兼。すべてが狂言であったのだ。話は回想に入る。瘴気を払ったのは本当のようだ。しかしあのイタコシーンはどこまでが本当でどこまでがお芝居なのかまったく分からぬ。実虚の狭間で途切れ目がない感じ、六条御息所を彷彿とさせる。嘘か真か内裏は怪奇現象が次々と湧いて出る。よしこ様をだしに譲位を促そうと策を張るは安倍晴明。帝に手立てを聞かれ「んんーんんーー。」あまりの大根ぶりに笑ってしまうのだけど、勿体をつけながらも仕舞いにはきっぱりとご出家を提言する。今までユースケだけ下手じゃない?と思ってたのだけど、きっとこれまでも安倍晴明は常にあるべき姿の正しき安倍晴明を演じていた。だからいつも挙動がとぼけているし芝居じみている。だからきな臭い話ができる腹黒い兼家が好きなんだ。脅されて渋々…いやいやけっこう好きなんですよボク、みたいな。もし安倍晴明に未来が見えているなら、なおさらすっとぼけないといけない。知っているけど知ってない振り。だってお命とられちゃうから。

流罪の者を見送りに」「とりべの…」「とりべの!?とりべのとは屍の捨て場ではないか」道長の苛立ちについていかれないまひろだったが屍と聞いてみるみる顔色が変わる。2人は急いでとりべのへ向かう。そのころ呑気に山道を歩いていた散楽衆だが直秀は終始、神妙な面持ちをしている。何かがおかしい。連れ去られた一行を追う道長とまひろ。間に合いそうで間に合わない。いちどずれた刻は戻らない。鴉のむらがる小山を見やるとそこには息絶えた散楽衆が重なり合って横たわっていた。直秀も。「愚かな」道長検非違使にも自分にも非難を向ける。死は穢れ。帝とてよしこ様の御身に触れることはもちろん近づくことすら許されなかった。しかし二人は直秀のみならず散楽衆も丁寧に埋葬する。皆を弔い、大地に返し、二人は泣きながら疲れ果てる。

まさかの直秀退場でびっくりだ。彼がなぜそこまで貴族を恨んだのか、それも藤原を、なぜ当時の絶対的な階級を超えて真正面から恨むことができたのか、と考えると落としだね説はますます濃厚である。彼には回想でまた出てきてほしい。

一夜明けたのか数夜明けたのか定かではないが、弟の門出である。まひろは黄の衣ではなく桃の衣を羽織っている。息子の出立の日、お前が男であったらと改めて父に口に出され、「男であったなら、勉学にすこぶる励んで内裏に上がり、世をただします」まひろも自身の思いを言霊に変えるのであった。

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メモ書き】

蔵人頭藤原実資。「そなたの話はくどい」内裏での台詞はまさに自身が妻に連日言われている言葉である。「わしを公卿にしておけば」ぶつぶつぶつ。まただ。妻のイライラは頂点に。日記の書きなさいよ!!「そうよ日記日記日記!!」「日記には書かぬ!恥ずかしくて書けぬ!」実資が筆を取るのはいつなのか。実際に記録はもう少し後年で、それまでこの女夫コントが続くのだと思うとずいぶん楽しい気分になる。

次回「月夜の陰謀」

光る君へ8

「招かれざる者」

姫様たちが打毬の会を反芻する。公任推しと道長推しで激突するが、そこへ最近見つかった道長の弟推しの赤染衛門が割って入る。人妻なのにと指摘されるが(そうなんだ)「人妻であろうとも心の中は己だけのものにございます。そういう自在さがあればこそ人は生き生きと生きられるのです」名台詞で姫様たちを沸かせます。これはききょうの在り方でもあり、まひろもハッとさせられる。視聴者もこの言葉で秘する恋ないしは推し活への力強いアシストを受けて強く頷くのである。

「こまろ〜」また猫チャンでお上手にカットインする倫子様。虚を突かれて倫子パパの右大臣家ディスが止む。右大臣が三郎君との縁談話を母君より持ち出され、じつにまんざらでもないご様子であったが倫子様の心と態度はウラハラ。謎のツンを見せ父上母上の元をそそくさと立ち去り、道長様を思い浮かべてひとり頬を染めるのだった。

「一緒に行くか?」「行っちゃおうかな?」「行かねえよな」何この台詞、甘酢調味料が瓶ごと炸裂である。しかし6回7回から続いたときめき内裏学園編はひと段落し、一変して重めの展開が始まる。

(第9回へ続く)

 

光る君へ7

「おかしきことこそ」

大丈夫大丈夫、道綱道綱わらったw 悪夢に飛び起き「こわいよお」と道綱母にすがる右大臣様。「大丈夫でございますよ、まことに大丈夫でございます」宥めながら側妻は、我が子である道綱の名を耳元に吹き込む。巧みなサブリミナルである。訝しむ右大臣様を畳み掛け「道綱のことお願いしますよ?」との念押しを忘れない。才女はただでは起きないのである。

場面は変わって屋敷で鞠のソロ練をする藤原実資。内裏人事の不満をくどくど漏らすので、それを鬱陶しがった妻が「日記に書きなさいよ」と一蹴する。このシーンもめちゃくちゃ笑った。これが本当に小右記の始まりなのかは定かでないが、そうであったら楽しいなあ。おかしきことこそめでたけれ。

そしてお待ちかね打毬の会。お勉強会でお手紙を回し読みした姫様たちは大はしゃぎ。お招きがあったことをみなさん自負しています。さらに自尊心の権化、清原元輔の娘ききょうが「斉信(ただのぶ)様からぜひにとお招きを受けまして」と鼻高々です。「あら斉信様はずっと我らが倫子様へ熱心にアプローチしておいででしたのよ?」とでも言いたげなグループの含み笑い。察知した赤染衛門が場をとりなすかのように、ききょうの聞こえを褒め称える。創話だとしてもこの小さな仮屋に、後の清小納言と後の紫式部赤染衛門が揃い踏みするんだ。胸熱だ。これは何かあるのかと思ったがとくに何も無かった。とくに何も起こらないのになぜだか魅せられる作品こそ芸である。

いよいよ選手入場。思い直して会場に向かったまひろは道長様のお姿をみとめ、続く直秀に怪訝な顔を向ける。なんであんたいんのよ。パドックを入場行進する道長様がまひろに気づく。最近見つかった弟もとい直秀もまひろに気づく。三者三様の思いを胸にプレイが始まる。けっこう尺長めのプレイ動画が流れていく。目を逸らしていたまひろもいつしか応援体制だ。満面の笑顔である。結果、清々しい大勝利。ここで終われば最高のお貴族様青春映画だった。

勝ち試合に心ほぐれ、男どもの口が滑り、まさに男子部部室、ロッカールームである。でしゃばりな女。あれは地味でつまらん。あれはないな。今日見たらもったりしていて好みではなかったわ。女ってのは邪魔にならないのがいいんだぞ。あれは身分が低いからダメだけど。まあききょうも遊び相手としてしか考えてないけどな。もう最低。

賢明な道長様は会話に関わらずも、まひろを反芻してたのかぼんやりして「ん?」と生返事しちゃった。まひろが身を潜めて聞いているのにすれ違いもいいところだ。道長様は斉信に左大臣一の姫へアプローチを頑張ってもらいたい。それで話を振ったら余計な愛人トークに火がついた。藪蛇だ。そして公任のつっこみ「人妻だろ」に笑った。遊んでやるつもりが遊ばれていたのはおれだったのかと斉信の愕然とした表情に胸がすく。女を品定めする時女たちもまた男を品評しているのだ。人妻なのに若き公達に想われた私の武勇伝として永遠に語り継がれてしまうのだろう。相手が一枚上手でしたね斉信様。このゲストークの間も貴公子たちが汗と雨を拭き拭き肉体美をお披露目しており、突然のサービスカットなのかどうなのか。品評されているのは一体どちらだ、というじつに哲学的な問いである。

 

その他メモ

・超えてはならない神社の垣根を踏み越えてしまうほど恋しいお前に会いたい(本人音読)

・藤原長兄の温かみが道兼のつかえをほぐす。置いてはゆかぬ。聡明で優しき夫妻である。しかし置いてはゆかぬ、は完全にフラグである。

・烏帽子は寝所でも外さないんだ。ちょんまげにするのは男性器の象徴なのかもなあ。ちょんまげにしていないときは帽子を被っていないから。

・「ふられた!」「おれも見たかった」道長様、いい男である。「邪魔しちゃった」お前もいい男だよ。最近見つかった弟、才気溢れる御仁であるあたり本当に兼家様の落とし子なのかもしれないなあ。

NHK大河「光る君へ」6 今回は長めの感想と解釈

第六回「二人の才女」

今回いたく感動するのは国学も漢学もたいそう苦手で文のやりとりも避けていた道長様が、まひろを想う一心で頭を捻り言葉を紡ぎだす姿である。渋々ご出席になった漢詩の会では治世など知ったことかと恋を綴り、まひろのためなら気を逸らせて筆を手にとる。これまでLINE未読スルーだった男子が、返信を待たずに連投してくるのである。

ちはやふる 神の為垣(いがき?)もこゑぬべし こひしき人の みまくほしさに

愛しい人をひと目垣間見るためなら神の生垣すら越えましょう…身分差だろうが恨む男の身内であろうが、その越えられない壁を越えてみせましょう。あなたに一目会いたいのです。

えっめっちゃ好きやんけ。上手とはいえぬが懸命に認めた直筆がまた良い。代筆など要らぬ。そうだそうだ。しかも知ってか知らずか、まひろの母の名はちやはである。道長様は意図せずとも、まひろは意味を重ねたのかもしれない。異界に旅立った母が愛しい娘に一目会いたいと願うとき、それこそ天世と現世との井垣をも超えてあなたのそばで見守っていますよと。もし道長様に含みがあるならばそなたの母君のことも片時も忘れずお気持ちに寄り添いますと告げているのだ。

さて冒頭に戻ると、道長様ご本人の意向を他所に、右大臣家三郎君と左大臣家一の姫の縁談が固められつつある。倫子様、詮子様、兼家様と三者三様の思惑で利害が一致してしまった。宇多天皇の血筋、土御門殿の財、左大臣とのつながりを是とし、己のナイスアイデアを息子に打診する兼家様だが、相手は目をかけている読めない三男坊である。切り出す際にちょっと声がうわずっているのがお可愛い。ここだけはただの父の顔である。そして意中の女がいるを察すると、あーいないよねいないいない、と言霊で掻き消すのであった。しかしかの事件について核心に触れるや一転、道兼はお道具、と言い切る非常な父。道兼といい道綱といい一族を率いる器に足りぬ者には厳しいのであった。

赤染衛門の講習会、本日は蜻蛉日記。めでたく縁談のまとまった顔の四角いカップルのお祝いも兼ねている。恋愛はともあれ結婚において意外とこういう共通点は大切なのだ。おかしきことこそ、めでたけれ。閑話休題

まひろが語る蜻蛉日記の解釈はまひろの行末そのものである。高貴な殿に身分を超えて愛されてしまう私。正妻になれずお可哀想?いえいえ彼の心に住まう女人は私でございますよ。と情熱的に匂わせる。いや匂わせどころかこれは熱烈な公開ラブレター。想い人にも自分の日記をリアルタイムで読まれて良いだなんて平安のお貴族様は心臓に毛が生えている。それを愛読書とするあたり、まひろにとっても恋の自慢話は美学なのであろう。それに道綱母の独り相撲と思いきや次回の予告で赤ちゃんに戻った兼家様の差し込みが。泣きつく先はどなたのお胸ですか。楽しみである。

衛門に意見を認められ嬉しくなったまひろはつい差し出がましくも写本をお貸ししようとするが倫子様は「要らないわ」一言でぴしゃりとお断りする。この断り方、いっそ清々しい。まひろから生き方を曲げられない性分であるを伝えられても、気まずい雰囲気を残すことなく「苦手は苦手、ということでまいりましょうか」とまとめあげる倫子様のコミュニケーション力は計り知れない。

そしていよいよ漢詩の会。ガールズバーで接待されるよりも勉強会が好き。若手の心を掴むには、この令和でもきっとそうなのだよ。お題が「酒」なのもまたパンチが効いている。人心掌握に長けた道隆様に若人の支持は傾いた。若手が飲み会に来ないと嘆く昭和スタイル上司勢は見習おう。政治的な思惑だけではない。道隆様は若人を柔らかく慈愛に満ちた目で見ているのだ。会に遅れてきた道長様にもよくきたねというふうに温かい眼差しを送る。こら何時だと思ってるんだ?遅刻の理由を述べよ、不作法者は出ていきなさい、などとは決して言わない。五節で居眠りする道長様を忌々しそうに小突いた道兼様とは対照的だ。漢詩の会で最も立場の低いであろうまひろにも発言の機会を与えている。懐と造詣が深い理想の上司なのである。

そしてタイトル回収「二人の才女」が満を持して運命のご対面だ。道綱母や後の紫式部に負けず劣らずぐいぐい前へ出る才媛、後の清小納言の登場である。諱はききょうという設定。この空気を読まずに思ったことを言う感じ、イメージ通りで快演である。衣装を見ればわかるに二人の才女、ききょうの方がずいぶんと裕福そうだ。お父さんもこの会の主幹事だし。公任の詩評を指名されたまひろが言い終わるやいなや、あらぁそうかしらぁ?と意見を求められていないききょうが口を挟む。結果、話題を掻っ攫ったのはききょうであった。そのでしゃばりを若人たちはわいがやと寸評する。好ましいかどうかを問わず強烈に殿方たちの印象に残ったのである。公任の評にしてもどちらに軍配かとするならばききょうが相応わしいものだったろう。だってまひろの講評は道長に向けたものだから。

 

(追記)古典引用、一部引用について。修正あり。

ちはやふる 神の斎垣もこゑぬべし 大宮人の 見まくほしさに(伊勢物語)

ドラマ内の歌を現代歌人に読んでもらうのか気になっていたが基本は古典利用のようである。おそらく道長の恋文も借り歌という扱いではなく、このドラマの中では本人が読んだという設計ではないかと思う。なぜなら劇中の道長はまだそこまでの教養がないからだ。内裏のお勉強会ではいつも筆が止まっていた。不勉強者が記憶の歌を即興で認められるだろうか。しかも漢詩の会では当日まひろがその場にいることもお題が酒であることも知らなかった。それに本人作でないと漢詩の会でまひろが評した白楽天のような…という台詞が噛み合わない。突然に公任の歌評を請われハッとするまで、まひろの胸の中にはずっと道長の詩がぐるぐると渦巻いていたのである。だからつい白楽天と言ってしまった。白楽天の歌を白楽天のようなと例えてしまったら例えにならない。それに道長様は代筆など要らぬ、と言っていたではないですか。借り歌もさほど好まないのではないかな。

・(追記訂正)再放送を見て。第7回の前に再放送でおさらいしたのだけど、漢詩の会は彼らでいうところの古典を選ぶものだった。よく聞いてたら明確に「選ぶ」といっていた。公任のときだけ「作」とも。なので道長は本当に白居易の詩を捻り出したのだ。がんばった。字は下手だし誤字もあるが苦手な漢詩もまひろに思いを伝えるためなら乗り越えたということだ。実際に道長は誤字が多かったという。それにまひろの父が間違いもうまくフォローして読み上げる勧進帳をしていそう。公任の評を促されたときまひろは道長のことで頭がいっぱいだったからつい白楽天のようなと口にしてしまった(ここは解釈同じ)。それは道長にとって返歌に等しい。他の参加者に酒歌は恋の詩とは映らないし、評も白居易を持ち出した今どきの無難なものと受け取られただろう。まさに二人だけのコール&レスポンスだったのである。

・さらに来週分のチラ見せ番組を見た後の感想。まひろは道長様に駆け落ちまで打診されてる。であればもうこの「見まくほし」は結婚してくださいとほとんど同義である。兼家様から縁談話を持ちかけられたときはすっとぼけていたが高速で脳内計算していたのであろう。下手を打てばまひろが父に消されかけない。子飼いの為時に圧力もかけるだろう。バッドエンド回避のために道長が次回うご

(追記の追記)

・この大河ドラマ、詠唱が入るや古典オタクはどれだ?あれだ!借り歌だ!とついそわそわしてしまうが、大河ドラマは視聴者の裾野がとても広い。おそらく古典知識がなくとも楽しめるようにドラマ内では借り歌としていないのではないかな。注釈が入らなければそれは本人が詠んだと思ってよし、それで通じるつくりになっている。本歌を知ってる人や気になる人はあれだな?と内心でニコニコすればいい。視聴前に古文の教科書と便覧を引っ張り出さなければ視聴者としてスタートラインに上がれない、なんてことはない。

 

その他メモ

・あまりに良くて3000字超えてしまった。

・女御たちの伝言、ありんこみたいだった。

・今回はクレジットを見た。はじめてきちんと見たかもしれない。オープニングのここに書いてあったんだ。いつもオープニングは聴くだけだった。だから配役がわからなかったんだ。

テーマピアノ演奏、反田恭平!!

吉高 柄本 黒木華 井浦 吉田羊+蔵之介(このあたりは名前見ればわかる)

玉置 高杉 町田(今作で知る)

岸谷 段田(わかる)

光る君へ5

集中してみたいと思ったらなかなか時間がなくやっと見れた。第五回「告白」

 

冒頭から倫子様すてきです。

これぞ貴族界の女帝となるべき御方のお振舞いでございます。容姿ディスには乗らずさらりと身交わしの術、しかしお噂にのぼる藤原のご兄弟にはちゃっかり目をつけ探りを入れる。淑女でありつつも、ご自身はたいそう面喰いでございますこと。うふふ、おほほ。楽しそう。

そして待ってましたとばかりに取り巻き姫が、まひろのあれやこれやを中傷する。場の空気の変化を読み取れないままペラペラペラペラしゃべり続ける。赤染衛門の憂い顔。倫子様が心の地底でブチ切れていやしないか。一方で我が主がこの場をどのように対処なさるか試すような値踏み。そこへぴしゃりと倫子様の悪役令嬢捌きである。今週も最高だった。

場面は変わってまひろ宅。うさんくさいうさんくさい。ご祈祷が酷すぎて笑った。実際、平安の世はこんなことばっかりやってたのだろう。

琵琶ってああやって弾くんだ。国宝展で貝の装飾を施された高そうなものを見たが、まひろの琵琶はいたく質素である。以前に倫子様は箏曲を披露されていた。現代に例えるならばそれぞれの愛器はグランドピアノとアコギである。史実回収に向けて二人の対比が散りばめられている。

倫子様は慎ましやかでありながら、猫チャンをダシに右大臣様へ自分を売り込む。自分の美貌と美髪を垣間見せ、父に入内させる気はないと吐露させる。外堀から固める術を知っている。きっと彼女の計画通り。一方で貴族的大大大チャンスを棒に振ってしまうまひろ。道兼がちらつくおぞましさと地続きの淡い恋の成就など、選択肢から完全に消えてしまう。いずれ道兼の死後に蓋をして追いやった恋心が再燃するのかもしれないけれど今、まひろの心を激らせるのは怒りと憤りのみだ。

ここで直前に道綱母子を挿入するのもまた憎い段取りである。まひろと道長がこのままふとしたことで結ばれたとして道綱の母ポジが関の山。道綱母が才媛であることも含めてその人生はまひろに重なる。

終盤は道長とまひろの告白である。身分を偽っていたことの告白。6年前の事件の告白。前半5話の着地点、コミックスなら1巻突破である。盛り上がるべきシーンだけど、ちょっと長かった。

 

その他メモ)

ロバート秋山かっけえ。最大限に彼の魅力を引き出している。真面目で実直な人物で、なにも間違ったことを言ってないのにそこはかとなく笑いが込み上げてくる。命とられても俺は信念を曲げたくない曲げたくないんだ!実直すぎて眩しいほどの男は誰にも手折られることはない。

・伏せる弘徽殿の女御さま。おきのどく〜おしあわせ〜(爆笑)

・道綱の母でてきた!

・「関白様…」これはこわい。暗闇に浮かび上がる黒装束勢。

 

次回は「二人の才女」

誰と誰でしょう。楽しみである。