きみの鐘が鳴る

いやもうなんも言えねぇ…という感想なのでとくに心に残った文章を書き留めておく。

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「いいだろう、この学校に通いたいか?」

父にそう訊かれたから、うん!と答えた。

「ぼく、この学校がいい!」

(略)軽い返事だった。こんなにも拘束力があるとは知らなかった。

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「(略)あれ、また切ってる、髪の毛」

どうして母には、すぐに何でも見つかってしまうのだろう。

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「(略)全落ちするよ?このままじゃ二月、全落ち!全落ち!全落ち!」

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「(略)私なんかに合格くれるところがあるんだと思って」

「(略)ちゃん、追いつめられていたね」

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「中学受験に失敗なんて、ない」

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そうだ明らかに失敗といえるのは親の振込み忘れくらいだ。

少し前なら二月の勝者、もっと前なら下剋上がテレビドラマになっていたけれど、子ども目線で綴られた中学受験物語はとてもめずらしい。著者ご自身も中学受験生だったらしくその描写はリアルである。架空の学校名をぼんやりとあそこかな〜?なんて想像しながら読んだけれど鷹城中がどこかわからなかった。海の置き換えでいいのかな?だとするとなんで鷹?常用漢字じゃないから?

ちなみに読む前にうっかり本書の感想が目に入ってしまい、のっけから犯人はヤス状態だった。そのうっかり見た感想では、主人公は中学受験ダメだったようです、と書かれていたのである。だから全落ち全落ち全落ちのあたりでものすごい不安に襲われた。なにこれ旗立てすぎでしょ、先読めないこわい。合否を示しているであろう行を手のひらで隠しながら読み進めた。けれど蓋を開ければエイト学舎のリザルト(涼真パパふう)は大成功の部類ではないか。あれは完全にトラップだったと読了後に合点した。中学受験の第二志望、ことに初手前に組んだ第二志望なら、いやそれなら第三志望くらいまで、充分に第一志望群と言って良い。このへんは他の進学受験と認識が大きく亀裂しているように思えた。感想言えないといいつつじわじわ後から感情が湧いてくる一冊だった。